たかひで鍼灸接骨院


日本腰痛学会

福島県立医科大学医学部整形外科学講座

長谷川淳史氏

腰痛EBM


腰痛EBM・・

◇レッドケース・・・精査対象
・発症年齢が20歳未満か55歳超
・最近の外傷歴(転落、交通事故など)
・進行性で絶え間のない痛み(夜間痛、自発痛、動作と無関係)
・悪性腫瘍の前歴や長期のステロイド剤使用歴
・全般的な体調不良や原因不明の体重減少
・脊椎叩打痛や身体の変形
・発熱や膀胱直腸障害

◇イエローケース・・・心理、社会的危険因子・予後に影響
1 腰痛の対する不適切な態度や信念
・痛みの恐怖心から極端な動作の制限や用心深さをとり続け、もっと悪くなるに違いないと思っている。
・痛みが完全に消えてからでないと、日常生活や職場に戻れないと考えている。
・日常生活や仕事で痛みが強くなると信じ込んで、元の生活の戻るのが不安である。
・今の自分は、絶望的で最悪な事態に陥っているので痛みを消すのは難しいと信じ込んでいる。
・積極的に社会復帰しようと思えない。

2 不適切な行動
・長期間の安静や必要以上の休息、痛みに対する恐怖から運動不足。
・治療者や医療機器に対する依存度が強い。
・腰痛を発症してから良く眠れない。
・腰痛を発症してからアルコールやサプリメントなどの摂取量が増えている。

3 補償問題
・保障や医療費の問題で紛争していて解決が遅れている。
・腰痛や腰痛以外の問題で補償請求をしたり、仕事を3か月以上休んだことがある。
・過去の治療で関心を示してもらえなかったり、ひどいことをされたと感じている。

4 診断と治療の問題
・腰痛に関して異なる診断や説明を受け混乱したことがある。
・絶望感や恐怖心を抱かせる診断名を告げられた。
・身体を機械のように考えていて、修理を求めるような技術的な治療、あるいは魔術的な奇跡を期待している。
・これまで受けてきた治療に不満がある。
・仕事をやめなさいというアドバイスを受けたことがある。

5 感情の問題
・痛みに対する恐怖心がある。怒りっぽくなった。
・気分の落ち込みがあり、楽しいと思えることがない。
・自分の気持ちを抑えられないほど大きなストレスを抱えている・
・自分は役立たずで、誰にも必要とされていないと感じている。

6 家族の問題
・配偶者やパートナーが過保護。仕事を代ってくれたり、熱心に気遣ってくれる。
・家族から善意からであるが恐怖心をあおったり、絶望感な気持ちにさせたりする。
・家族から無視されたり、欲求不満をぶつけたりされひどい仕打ちを受けている。
・社会復帰に向けた試みに家族の協力が得られない、相談できない。

7 仕事の問題
・転職を繰り返す、ストレスや不満の多い仕事、やりがいのない仕事、同僚や上司との関係がうまいいかない、非協力的で不幸な職場。
・腰痛に対する会社側の対応でいやな思いをしたことがある、会社側が関心を持ってくれない。
・24時間交代勤務制、真夜中の作業、休暇が取れない柔軟性のない勤務スケジュールなどの仕事についている。
・仕事は腰にダメージを与え、危険で有害なものと信じ込んでいる。
・社会復帰する際、軽い仕事から始めたり、段階的に勤務時間を増やしたりすることができない職場環境。

◇グリーンケース
・非特異性.腰痛(原因不明)は80〜90%で6週間以内に90%の患者が回復する。
・神経根症状の患者は全腰痛の5〜10%で6週間以内に50%の患者が自然回復。



◇発症率
・人口の10%(約1300万人)が腰痛を抱えていると推計:厚生統計協会2005
・アメリカの年間発症率は56%(約1億6700万人)と推計:1998
・生涯のある時点で59〜84%が腰痛を経験、年間発症率は27〜65%が腰痛に苦しんでいる:2000

◇再発率
・初めて腰痛を経験した人の62%が一年以内に再発し、全腰痛患者の再発率は60%に達する:2003
・発症してから最初の一か月で痛みの強さや活動障害の程度が58%改善し、82%が職場復帰を果たすが、一年以内に73%が再発する:2003

◇慢性化率
・腰痛患者の23%が3か月以上続いている:1993
・初めて腰痛を経験した人の16%が6か月後も痛みを訴えている:2003

◇椎間板・前弯・骨盤
・3歳から110歳で椎間板への血液供給量が減少し始め、軟骨終板にも亀裂が認められ11歳から16歳では繊維輪の亀裂や断裂といった椎間板構造の崩壊がみられた:2002
・健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性がみとめられた:1995
・腰部前弯の強弱と腰痛とは無関係である:1985
・骨盤の非対称性と腰痛は、どのような臨床的意義においても関連がない:1999
・安静臥床には効果がないどころか回復が遅れることが判明した一方、耐えられる範囲内で日常生活を続けることが職場復帰を早くするだけでなく、慢性化を防ぐことができ、再発率をも低下させる:.1997

◇画像診断
・5つの異なる職種を対象に1年間のわたりMRIで繰り返し撮影した結果、椎間板異常と腰痛や職種との関連性は無く、調査期間中に腰痛を発症した者のMRI所見にも変化なし:1997
・421名の腰痛患者を対象にX線撮影群としない群にし、9か月追跡した結果、X線撮影群が痛みの持続期間、活動障害、健康状態の成績が悪く受診回数も多かった:2001
・.腰痛と画像所見との間に関連性は認められない:1996

◇まとめ
・不安や恐怖から安心へ
・安静にせず普段通りのせいかつを
・自分で治すという意識を持つ・ストレスの対処